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フリーメイスンへの誤解をとく必要がある

■宗教・政治・ビジネスの話は禁止

 大手一般企業で営業をしている若手会員が、「フリーメイスンの会員だとわかると白い目で見られて仕事にも影響するので、会員であることは公表できない」という。このような状況に、私は危機感を持っている。だいたいにおいて、フリーメイスンに強い偏見が持たれるのは先進国の中では日本だけだ。今回などは、オウム真理教によりフリーメイスンの陰謀説が流され、小沢一郎氏が会員であるかのような噂も流された。何か事件があるたびに、フリーメイスンと結びつけられるのは困ったものだ。現在、日本のフリーメイスン会員には、国会、県議会レベルの政治家はいない。もちろん、小沢一郎氏は会員でもなんでもない。また、いわゆる財界人といわれているような人も会員にはいない。

 フリーメイスンについて書かれる時、団体が行った行為なのか、個人の行為なのかが混同されている。確かに米国建国の父であるジョージ・ワシントンは会員だった。だからといって独立戦争がメイスンの仕業だとはいえないだろう。なぜなら、独立戦争の相手国の英国にも多くの会員がいたからである。
 そもそも、会員が儀式を行うために集まるいっさいの集会では、宗教・政治・ビジネスの話は禁じられている。そのため、会員同士が相手の社会的地位を知らないことはよくある。ましてや会員同士だからといってビジネスで遠慮し合うことはない。会員だったマッカーサー元帥が、同じ会員のトルーマン大統領に解任されたのは象徴的な事実だろう。

■保安条例とスパイ容疑と

 では、フリーメイスンが日本で異端視され続けているのはなぜだろうか?少し歴史をひもといてみよう。
 1887年、日本政府は自由民権運動を抑えるために保安条例を発し、秘匿性のあるすべての集会を禁じた。フリーメイスンは伝統的に役員就任式を除く儀式内容は公開していないため、秘匿性のある集会となってしまう。困ったメイスンは、時の井上馨外務大臣と面接して妥協に基づく紳士協定を結ぶ。内容は、日本政府がフリーメイスンの集会を取締の対象としない代わりに、メイスン側は日本人の入会は許さず、宣伝活動も行わないといったものだった。なお日本人の入会は1950年より解禁された。
 その後、日本が帝国主義的ナショナリズムの度合いを少しずつ増していくのにともない、大正末期から昭和初期の新聞や雑誌などに反メイスンの記事が現れた。さらに、第2次世界大戦中は、日本に残留した会員は、ほとんど例外なくスパイ容疑で拘禁され、かなりの数の会員が獄中で死亡した記録が残っている。
 このように、紳士協定によって日本人が会員になれなかったことと、長年にわたり反フリーメイスン・キャンペーンが続けられてきたことの2点が、日本人の心に偏見を宿らせる温床となった。また、10年ほど前から、フリーメイスンが世界を支配するといった内容の出版物が出回り始めた。およそ荒唐無稽な事が書いてあるものだが、日本人の心の奥深くにある偏見を刺激しているのは確かなようだ。

■開かれたメイスンに

 もちろんメイスン側にも問題がある。会員間の相互認識と会員相互の信頼感と団結を強めるために、儀式の内容を公開しない伝統が、会員以外の人に猜疑心と不信感を与えた。メイスンに対する誹謗中傷に全く取り合わない姿勢も、金儲けを狙うライターと出版社を助長させた。
 そのような結果が、日本人会員の数にも現れている。現在、日本での総会員数3000人分のうち日本人は300人しかいない。このような不均衡を打開するためにも、私はメイスンに対する日本人の誤解を解く必要があると考えている。
 具体的には、規則にそむかない形でメイスンを少し開かれたものにする。役員就任式のテレビ放送やビデオ制作も考えている。一方で、あまりにひどい誹謗中傷には、法律的な手段で対抗する。

 もともと、フリーメイスンは中世ヨーロッパにゴシック建設が流行したときに、親方や石工らが相互扶助の立場からギルドを作ったことに始まるといわれる。石工達は、建設現場近くにロッジと呼ばれる集会小屋を作り、食事・宿泊・設計・施工工事・技術指導などを行った。当時は文盲の人が大半だったので、建築技術上のノウハウはメイスンの間で、守秘義務とともに口伝され、同時に道徳教育もなされた。
 このような歴史の中で培われた儀式であるから、秘密の儀式といっても内容は道徳的なものだ。文盲の同士を教育するため、さまざまな大工道具が象徴的に説明に入ってきたのも当然だろう。オカルト的な儀式のための象徴ではない。
 あまり知られていないが、グランドロッジ設立と同時に、他のグランドロッジとの交流が始まるわけではない。グランドロッジとしての活動が深まり、他のグランドロッジから認められ、相互承認の手続きをとらない限り交流は生まれない。さらに、グランドロッジに上下関係はなく、統括する機関もない。このような状況では、世界征服などとても無理なことがわかるだろう。ついでにいえば、ロッジに集まるのもだいたい週1回で、世界征服する時間もない。

 入会勧誘もしてはいけない規則になっているため、あらぬ誤解を招いているようだが。無神論者ではないことと、家族のいるものはきちんと扶養していることなど、常識的な入会資格となっている。私も1963年に、好奇心から会員になった。会員は人種や宗教に差別されない。イスラエルのグランドロッジでは、イスラム教徒がグランドロッジの長になったこともあると聞いている。メイスンの理念を理解する助けになるだろう。

■フリーメイソンの視点から

--ここ数ヶ月の間、テレビや新聞などのメディアを通してオウム真理教に関するニュースが洪水のように流れてきます。オウム真理教については、どのような印象をお持ちでしょうか。

 これだけ大量の情報を受け取りながら、オウム真理教の実態そのものについてはきわめてあいまいであるというのは不思議なことです。オウム真理教に関する情報の大部分が、彼等の犯した凶悪な犯罪の報道であるためかもしれません。修業のための瞑想法としてヨーガが取り込まれており、仏教教団であるかと思うと、終末における善と悪との最後の決戦ハルマゲドンなど本来はキリスト教の思想を宣伝しています。話題の空中浮遊などは、道教の神仙を想起させる超能力です。オウム真理教は独自の教理を持たず、こうした諸宗教の寄せ集め的な教団ではないかという印象をもっています。フリーメイソンにも言及しているようですが、勘違いをしているらしく、まともに取り合う内容ではありません。

--かりに諸宗教の寄せ集めだとしても、それだけなら折衷的な宗教として理解できないことはありません。しかし、オウム真理教の場合には、さらに科学を取り込んでいる点がユニークだと思います。

 科学と宗教とは、じつはもともと相性がよく、俗にいわれているほど矛盾するものではありません。科学、特に近代自然科学というのは、ヨーロッパの歴史を抜きにしては考えられないわけですが、その起源を探っていけばいくほど科学そのものの宗教性を実感せざるを得ません。宗教と科学とをいきなり併置すると何か違和感がありますが、その間に魔術という項をおいてみると、もう少し両者のつながりが分かりやすくなります。
 科学は長い間自然哲学と呼ばれており、それより以前では自然魔術あるいは白魔術と重なっていました。魔術は、宗教よりもむしろ古くから存在する技術であり、人間や自然を、現象的には隠されて見えない特殊な力を探し出そうとする欲求こそ、近代自然科学を生み出す原動力となったのです。

--フリーメイソンは、科学と宗教という視点からどのように位置づけられるのですか。

 フリーメイソンは、宗教の世俗化の動きが頂点に達した18世紀という時代に登場する友愛団体です。初期のフリーメイソン指導者は、イギリスのデザキュリエ、アメリカのフランクリン、オーストリアのボルンなど、いずれも当時の代表的な自然科学者でした。フリーメイソンは近代という時代に登場した一種の理性宗教であったといえるかもしれません。そこでは、科学と信仰が矛盾することなく同居しています。しかし、いくら科学と宗教は相性がいいといっても、オウム真理教のように、宗教集団が毒ガス製造と結びつくことは絶対にあり得ないことです。

--オウム真理教では信徒を何種類かのイニシエーションに参入させることによって、教団におけるその地位を上昇させていくという手法をとっています。

 先日も、地下において絶食状態で何日も瞑想を続けるという修行法を紹介していましたが、修業あるいは試練というのは、密議宗教、仏教、キリスト教などほとんどすべての宗教が取り組んでいるものであり、何も目新しいものではありません。フリーメイソンも例外ではなく、そのイニシエーションにはさまざまな試練が儀式化されて取り込まれています。初期の頃は、親方・職人・徒弟の3位階しかなかったのですが、後には次々に高位位階を創設して儀礼も複雑化していきます。

--オウム真理教のイニシエーションや正大師や正悟師などの位階制などは、効果的な資金調達の手段として利用されていたようですが。

 18世紀のフリーメイソンでも、とくにドイツやフランスにおいてはさまざまなペテン師たちがフリーメイソンのロッジを利用して暗躍し、人々から金銭をむさぼるということがありました。何10種類のさまざまな位階のフリーメイソンの宝章を一台の馬車に満載し、それを高額の金を取って売り歩いたというペテン師の話も伝わっています。
 位階制に関しては、集団の中に置かれるとできるだけ中心に向かおうとする権力欲と名誉欲が人間にはあり、オウム心理教ならずとも、ほとんどすべての社会集団が、程度の差はあるにしても同じような手法を駆使して集団の秩序を維持しています。

--それにしてもなぜ多くの若者がオウム真理教に魅力を感じたのでしょう。

 超能力への憧れがあったという理由のほかに、集団への帰属願望も無視できない要素です。フリーメイソンが多くの人々を引き付けた大きな理由の1つは、くつろいで一時を過ごすことができるというクラブ的な雰囲気にありました。社会が個人と個人のこまやかな結びつきを失いつつあるとき、その内容がどのようなものであれ、同一の信条をもつ人間が集まって、現実の社会とは異なる別世界を構築する動きが出てくるのは十分に理解できます。家庭や学校や会社に居場所を失った若者たちがオウム真理教に引き寄せられていったのは、次章に希薄になりつつある現代社会の人間関係にも原因があったのではないでしょうか。

--オウム真理教のイニシエーションには薬物が頻繁に使用されています。

 宗教的イニシエーションと薬物が結びつく例は、古代から現代まで極めて多くあります。幻覚や陶酔感を呼び起こす神秘体験への近道として、阿片やコカイン、LSDなどの薬物が使用されたわけです。ギリシア時代の有名なエレシウス密議においても阿片が使用されたと主張する研究者は多くいます。この密議において信徒は、大麦の粉と水と薄荷を混ぜたキュケオンという飲み物を服用するのですが、そこには阿片が混入されたいたと思われます。
 最近の例でも、コカイン密輸で逮捕された書店社長がいますが、聞くところによると彼は自分が建立した神殿において宗教儀礼を行っていたといいます。コカインがそこで使用されていた可能性は充分にあります。オウム真理教においても、幻覚剤をイニシエーションのさいにうまく利用しながら、信徒に終末論的な幻覚体験を起こさせていたと考えられるわけです。オウム真理教の科学班の本来の任務は、このイニシエーションにおいて使用される幻覚剤の調合ではなかったかと推測されます。

--現代社会にオウム真理教が投げかけた教訓とは何だったのですか。

 近代自然科学が確立すると、それまでの魔術を迷信として葬り去ろうとしますが、私などは科学が今なお魔術の呪縛から抜け出していないと思います。むしろ、自然の隠された力への確信をもっているという点において、逆説的かもしてませんが、科学は、宗教や魔術成なしには成立しないといったほうがよいでしょう。
 テレビ・ラジオ、高速輸送、宇宙飛行、コンピューター、臓器移植、遺伝子治療など、現代文明を彩るすべての高度技術には、人間と自然を支配しようとする魔術の陰が落ちています。こうした技術と裏腹に、原爆や毒ガスなどの大量殺戮兵器などが存在しているわけです。問題は、科学の悪魔的な側面を見てそれをすべて否定するではなく、そうした危険な要素をもつ科学を誤用しないだけの批判力を育てる教育が必要であるということです。オウム真理教の事件は、科学技術の支配する近代という時代が、一皮むくと直ちに悪魔性をむきだしてくるということへの警鐘であったといえるでしょう。(■片桐三郎・日本フリーメイソン本部グランドロッジ広報委員会委員長。1925年生まれ。)

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